人にとってまさに進化の「隣人」

チンパンジーの社会性

人の進化の隣人

以前は、人とエイブの類似点探しに心血が注がれたが、最近はむしろ本質的な部分で相違点を探すほうが難しい。言い換えれば、両者のあいだの差違は質的なものではなく、たんなる量的なものでしかなくなりつつある。近年にいたっては、チンパンジーやボノボは遺伝子レベルで人と1%強の違いしかなく、彼らがモンキーはおろかゴリラやオランウータンよりも人に近い存在であることが明らかにされた。彼らは、人にとってまさに進化の「隣人」なのである。

父系社会のチンパンジー

チンパンジーは、複数の雌雄からなる十数頭から数十頭の集団(群)をつくって生活している。集団の個体間には優劣関係があるとともに、雌雄間、雄同士、雌同士で多彩な社会交渉も繰り広げられる。いわば彼らは人と同様に社会性の高い動物であり、その関係はさまざまな感情や行動に基づく個体間の調整によって維持されているのである。雌雄間の交渉では、当然交尾も行われる。しかし、近親間で交配が起こることは非常にまれである。なぜなら、雌は性的に成熟すると自分の生まれ育った集団を離れ、他の集団に移籍していくからだ。つまり、雌は自分の父親や兄弟と交尾することはないのである。一方雄は自分の出自集団に一生とどまるため、集団は雄の血縁によって継承される父系社会となる。